Saturday, June 11, 2011

あれから3ヶ月

このことに触れないわけにはいきません。

あのとき、私は、ドイツの自宅にいました。家に客人が泊まっていたこともあり、早めに起きました。テレビで、ドイツのチャンネルのニュースを見ているときに、突然、津波の映像が目に入ってきました。CNNワールドのチャンネルに変えて、そのまましばらく与えられるままに映像を見ていました。

職場に行きましたが、仕事は手につきませんでした。インターネットのおかげで、何が起きたのかはよくわかっていました。全員ではありませんでしたが、息子の幼稚園の子供の親、同僚、学生みなが大変なことが起きたことは知っており、心配する言葉をかけてくれました。

他に日本人はほとんどいませんので、まぎれもなく日本の代表です。次から次へ「家族は大丈夫?」と聞かれ、オフィスの外へ出歩きたくなくなったのを覚えています。いまでも、日本のどこ出身?と尋ねられると、相手がそのつもりで尋ねているわけではないのに、「震災の大きな被害を受けた地域の出身ではありません」と自然に答えてしまう自分がいます。

大きな被害を受けた方の悲しみ、苦労とは比べものにはなりません。しかし、遠くにいてもあの日から自分のなかで変わったものがあることを確実に感じます。自分のしたいことを、より強く求め、できることを自信をもって実行していきたいと思います。

あの日からしばらくはNHKの放送が常時ストリーミングで流されていたので、私もほぼ毎晩目を凝らして見ていました。その後、知人や親類と連絡をとるなかで、日本にいる方は余計に海外での報道が気になるようなことを感じとりました。報道の視点が違うために、海外ではより正確な情報が伝わっている、という認識だと思います。

ご興味おありの方のために、こちらのドイツ国営チャンネルARDで流されたリポート(ともに5分ほど)のリンクを貼っておきます。

4月11日放送のリポート

6月8日放送のリポート

ドイツ語ですが、感じは伝わると思います。「Atomkraft アトムクラフト」という言葉が「原子力」の意です。

この話題、書きたいことがいくつもありますが、また後日。

Friday, June 10, 2011

'Tips for success: Getting more done in less time'

発生生物学系の雑誌 Developmental Dynamics にタイトルのような記事を見つけました。あくまでも参考として。

講義、個別指導、会議、執筆、就職活動、そしてプライベート。time allocation は永遠のテーマだと思います。

Thursday, June 9, 2011

異国の幼稚園

大学で朝早くから講義をしなければいけないとき以外は、たいてい私が5歳の息子を地元の幼稚園に連れて行きます。自宅から歩いて3分くらいのところにある、公立の幼稚園です。

幼稚園といいながら、10歳くらいまでの小学生も午後だけ受け入れています。というのも、ドイツでは大抵、小学校は午前の授業だけで終わりだからです。宿題などするために午後だけ幼稚園に来るのです。

幼稚園内の壁に、小学生それぞれが自身の名前、年齢、好きなことなどを紹介した紙が張ってありました。その中には、「好きな旅行先の国 (mein Lieblingsreiseland)」という項目が!

こんな項目、日本の小学生低学年のプロフィールにはありえないと思います。

どれどれ?と見てみると、イタリア、フランスなどヨーロッパの国々だけでなく、キューバなど遠方の国も。ドイツ以外の国の血の入った子も多いので、その故郷の国を挙げている子も。ちなみに、キューバ出身の子はいないはずです。

周りの国が近いということ、そして、休暇のスケールも違うということ、いろんな要素があります。些細なことですが、「違い」を感じる瞬間でした。

Wednesday, June 8, 2011

'The PhD factory'

そういえば、4月21日号のNatureにPh.D.についての世界的な情勢を扱う記事がいくつか載っていました。
http://www.nature.com/news/2011/110420/full/472276a.html
http://www.nature.com/news/2011/110420/full/472280a.html
http://www.nature.com/nature/journal/v472/n7343/full/nj7343-381a.html
http://www.nature.com/nature/journal/v472/n7343/full/472259b.html
http://www.nature.com/news/2011/110420/full/472261a.html

異国でPh.D.

Ph.D.というのは、簡単にいうと「博士号」のこと。しかし、日本を出ると状況はいくつかの点で異なります。

日本に短期留学に来ている学生、あるいは海外での国際学会で知り合った学生、彼らの状況を尋ねてみて、よくわからない、と思ったことがある人も多いんではないでしょうか。

ドイツの場合、博士学生は、ドイツ語でDoktorand(女性はDoktorandin)といいますが、英語圏では、Ph.D. student あるいは とくに北米ではPh.D. candidateなどと言ったりします。もちろんドイツでも基本的に研究は英語主体でやっていますが、いくつかある呼び方のうち、私自身は、doctoral researcher という呼び方が気に入っています。この段階ですでに重要な発見をする「研究者」の立場にいるという意味で。

ここの大学の標準としては、博士学生は有給で、手取りで日本の学振DCよりすこし少ないくらいの額をもらっていると思います。契約書の上では、給与は「ポスドクの半分(具体的には「TVL13/2」)」という感じで書かれているはずです。ただ、税金を引かれる前の額について半分ということなので、手取りが半分というわけではないはずです。

給与をもらうのがあたりまえなら、その分、学生の自律性やプロ意識が強いのか?これについては、私は必ずしもそうとは思っていません。分野、研究室、学生によりけりだと思います。逆に、覚悟を決めずに博士を始めてしまうケースをより多く生みやすいと思っています。ちなみに、期間は最低3年が普通。この期間が伸びがちなのは日本も同じですね。

私のいる小さな街には日本人は少なく、そのおかげで、言語学の研究者に被験者として使われることがあります。それはそれで興味深いのですが、そこで知り合った学生に聞いてみると、言語学では博士学生が無給のこともあるとか。要は、研究室の状況などによるそうです。というのも、博士学生としての在籍登録と給与は別の話であって、給与ナシでも博士に進みたいという人はもちろん受け入れてもらえるわけです。supervisorにそれなりの予算があれば、有給となります。ドイツではいわゆる科研費に相当するグラント申請の際に博士学生の給与を含めて申請するのが一般的で、それが通れば、PI(ときにはポスドク)は特定のプロジェクト配属の博士学生が雇えるというわけです。

こういうスタイル以外にも、大学が出資する大学院プログラムや、学生が申請するscholarshipなど他の可能性もあります。これまで、私自身のグラントに絡んで、そして大学院プログラムを通して、何度か博士学生を募ったことがあります。私の研究チームに限らず、周りの状況を総合すると、日本からの応募は、ほぼ皆無です。インド、中国の勢いは例外視するとしても、韓国・台湾からの応募の頻度に比べて、明らかに低いのです。日本にいい大学院が多いことも原因のひとつでしょう。しかし、早い段階のキャリアももっと多様であってよいと思います。

大学の中での「博士号」について書いてみました。「博士号」がアカデミアの外でどう扱われているか、についてもいろいろ違いがあります。つづきは後日。

Monday, June 6, 2011

'Treat BLAST Searches as Scientific Experiments'

分子生物学にとって標準ツールとなったBLAST。簡単なようですが、使い方・結果の解釈の仕方を知らないと、大変な間違いになりかねません。

PLoS Biologyに出たこの記事、手短に基本的かつ大事なことを説明しています。レクチャー用のスライドまでSuppl Materialとして提供されています。

一見簡単なツールですが、BLASTの奥は深いです。ひとつの混乱は、データベースが多様になったことに起因しています。適切なデータベースを選んでいないせいで、目的の配列が見つからないなど・・・。

こちらのページでは、O'reillyから出ているBLASTについてのの内容を無償で公開しています。 著者のうちIan KorfとMark Yandellはともにgene predictionツールで有名な人であるということが面白い。

私は、自分が担当する学部・大学院のコースでも、BLASTの使い方を身近な実例を挙げて説明・実演する機会を設けています。このブログのタイトルではないですが、分子進化・分子系統を目指す人だけでなく、すべての分子生物学従事者が、進化の理解のもとに、分子機能を統合的に理解できるというのが理想だと思っています。

いずれ授業や試験を通した体験についてもここで書いてみようと思っています。

「PI道」入門の手引き

欧米でのPI(principal investigator、研究チームのリーダーの意)キャリアを始める人のために作られたリソースがいくつかあります。

Howard Hughes Medical Instituteによるものが非常に有名だと思います。このサイトに'HHMI Media'として置いてあるムービーは、非常に示唆に富むものです。

Burroughs Wellcome Fundによる冊子(PDF版もあり)も同様の目的のために作られたと思います。

書物ではありませんが、EMBOのラボマネージメントコースも有名だと思います。

どれもあくまでも標準化された見本でしかありませんので、環境と研究志向にあった独自のスタイルを創るのが重要だと思います。私の場合も、意図して無視しているTipsはいくつかあります。

Sunday, June 5, 2011

アカデミックスタッフデベロップメント

こちらの大学にはASD(academic staff development)オフィスというのがあり、様々なレクチャーやワークショップ(PhD学生向けポスドク向け)を提供しています。これらうちのいくつかは、research administrationの分野の博士号を持つコーチングのプロによって指導されています。このようなプロのコーチングスタッフを養成するためのコースも希少ではありますが、ドイツ全土を見渡せば存在します。

そこで学ぶことのどの程度が実際に生きるものなのかは、受ける人それぞれでしょう。しかし、このような研究キャリアサポートの枠組みがしっかりしていることは非常に心強いと感じます。

私も何度かトピックを選んで受講したことがあります。いくつか興味深いディスカッションができました。これについての詳しい話はまた後日。