Wednesday, June 8, 2011

異国でPh.D.

Ph.D.というのは、簡単にいうと「博士号」のこと。しかし、日本を出ると状況はいくつかの点で異なります。

日本に短期留学に来ている学生、あるいは海外での国際学会で知り合った学生、彼らの状況を尋ねてみて、よくわからない、と思ったことがある人も多いんではないでしょうか。

ドイツの場合、博士学生は、ドイツ語でDoktorand(女性はDoktorandin)といいますが、英語圏では、Ph.D. student あるいは とくに北米ではPh.D. candidateなどと言ったりします。もちろんドイツでも基本的に研究は英語主体でやっていますが、いくつかある呼び方のうち、私自身は、doctoral researcher という呼び方が気に入っています。この段階ですでに重要な発見をする「研究者」の立場にいるという意味で。

ここの大学の標準としては、博士学生は有給で、手取りで日本の学振DCよりすこし少ないくらいの額をもらっていると思います。契約書の上では、給与は「ポスドクの半分(具体的には「TVL13/2」)」という感じで書かれているはずです。ただ、税金を引かれる前の額について半分ということなので、手取りが半分というわけではないはずです。

給与をもらうのがあたりまえなら、その分、学生の自律性やプロ意識が強いのか?これについては、私は必ずしもそうとは思っていません。分野、研究室、学生によりけりだと思います。逆に、覚悟を決めずに博士を始めてしまうケースをより多く生みやすいと思っています。ちなみに、期間は最低3年が普通。この期間が伸びがちなのは日本も同じですね。

私のいる小さな街には日本人は少なく、そのおかげで、言語学の研究者に被験者として使われることがあります。それはそれで興味深いのですが、そこで知り合った学生に聞いてみると、言語学では博士学生が無給のこともあるとか。要は、研究室の状況などによるそうです。というのも、博士学生としての在籍登録と給与は別の話であって、給与ナシでも博士に進みたいという人はもちろん受け入れてもらえるわけです。supervisorにそれなりの予算があれば、有給となります。ドイツではいわゆる科研費に相当するグラント申請の際に博士学生の給与を含めて申請するのが一般的で、それが通れば、PI(ときにはポスドク)は特定のプロジェクト配属の博士学生が雇えるというわけです。

こういうスタイル以外にも、大学が出資する大学院プログラムや、学生が申請するscholarshipなど他の可能性もあります。これまで、私自身のグラントに絡んで、そして大学院プログラムを通して、何度か博士学生を募ったことがあります。私の研究チームに限らず、周りの状況を総合すると、日本からの応募は、ほぼ皆無です。インド、中国の勢いは例外視するとしても、韓国・台湾からの応募の頻度に比べて、明らかに低いのです。日本にいい大学院が多いことも原因のひとつでしょう。しかし、早い段階のキャリアももっと多様であってよいと思います。

大学の中での「博士号」について書いてみました。「博士号」がアカデミアの外でどう扱われているか、についてもいろいろ違いがあります。つづきは後日。

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