Saturday, August 27, 2011

ドイツでの給料計算

大学などドイツの公的機関で働いている方は、給与計算の複雑なシステムに苛立った経験がおありではないでしょうか?

ひとつの苛立ちは、往々にして就業開始月に給与が全額振り込まれないことです。計算が間に合わない、という理由で、身分上このくらいはあるだろうという最低額だけ初月に振込み、初月分ののこりは次月分と同時に1ヶ月遅れて振り込むというものです。

給料がどのように決まっているかを自分で知ったところで、その額を上げることはもちろんできないわけですが、間違いがあった場合や、転職などの際に複数のポストを比較する場合には重要な知識だと思います。

そこで、 給料の計算をシミュレートできるサイトを紹介します。ドイツ語ですがお許しください。

このサイトでは、一般に研究者が雇用される際の給与体系であるTV-L に基づく職、そして 公務員(Beamter)の職などが対象になっています。

私は、結果としてTV-LとBeamterの両方を体験したため、その違いを知ることが重要でした。先日の記事に書いたように、健康保険の加入先も変わってきますし、年金の扱いも違います。
('Akademischer Rat'という職がBeamter、つまり公務員の扱いになります)

実生活に密接に関わるところでは、実は、TV-Lの職では、月の終わりに給料が振り込まれるのに対し、Beamterでは月の初めに振り込まれていました。扱いが大きく違うことがわかると思います。


さて、上の給与計算サイト、たとえば
(順に)
「TV-L und weitere Tarifverträge der Länder」
「Tarifgebiet West (旧西ドイツ領域)」
「Entgeltrechner 2011」
と選ぶと、雇用・生活条件を入力するページに行き着きます。
ここで、条件を入力すると、税引き前と、手取りの額が表示されるというわけです。この条件入力のページの項目を見ると、何が給与額に影響するかがわかるわけです。たとえば、キリスト教徒の場合はKirchensteuer(教会税!)なんて払うことになり、月20ユーロほどが課されるようです。

ちょっと細かすぎる内容になりましたが、書きとめておこうと思いまして。


「へぇ~」と思ったらクリック↓
にほんブログ村 海外生活ブログ ドイツ情報へ

Thursday, August 25, 2011

米国の、そして世界のゲノム研究はどこへ?

きょうは短いですが、ドイツ生活ネタから離れます。

米国のゲノム研究を統括しているNational Human Genome Research Institute (NHGRI)という機関があります。ここで今年5月に行われたAdvisory Councilの会議の模様をYouTubeで見ることができます。

丸一日じっくり時間をかけて行われたようですが、聴いていて飽きません。まだ全部は見ていませんが、ゲノム研究のいろんな流れを感じ取ることができます。


「へぇ~」と思ったらクリック↓
にほんブログ村 海外生活ブログ ドイツ情報へ

ドイツの医療にお世話になる(2)

昨日分は、どうも多くのドイツ在住の方が 読んでくださったようです。

私は、公的健康保険と民間健康保険とを両方体験したおかげでいろいろなしくみとその背景を知るに至ったというのが現実です。しかし、もっと詳しい方はいらっしゃると思います。理解するのに時間がかかりましたが、なかなかわかる言葉で生きた情報に触れることができなかったせいで理解するのに苦労したのだと思います。年金や確定申告などのしくみも同様でした。

私のドイツ生活は5年目を迎えたのですが、これまで医者にかかることが多くありました。不健康だとは思いませんが、日本にいたときよりも、そして、私の息子、そして妻よりも間違いなくより頻繁に医者にかかっていると思います。

なかでも多いのは風邪の(あるいはそれに似た)症状でした。日本と違い、医者をおとずれても、たくさんの薬を処方してくれるということはありません。古くからのいわゆるホメオパシー(Homöopathie)の影響でしょう。こちらでは一般に、何らかの症状が出ると、かかりつけの医者(Hausarzt)をまず訪れるようにとよくいわれます。専門の医者へは、そこから紹介してもらえるわけです。私の場合、住んでいるアパートの真正面にかかりつけの女医(Hausärztin = ドイツ語ならではの女性形)がいます。あいにく彼女は英語が話せません。が、診療の際には私はなんとかコミュニケーションをとっています。

ドイツだけでなく、英語圏でも、一般の場面での別れの挨拶といえば、「また今度!」です。'Auf wiedersehen' であり、'See you again!' です。でも、診療の最後に、この挨拶をすると、また体調を崩すことを望んでいるようで、変ですね。日本語の場合は、こういう別れの挨拶は一般的でないので、考えたことがありませんでした。こういう場合、ドイツでなら、'Alles Gute' といっておくと気まずくありません。

風邪以外にも、突然体のいたるところに赤い斑点が出来た、首が回らなくなった、目がやたら充血、下痢が数週間止まらない、歯が砕けた、などいろいろありました。かかりつけの医者に紹介してもらうにせよ、そのつど、自分で電話で予約をとるところから、となります。私は職場では基本的に英語でいつも話す必要があり、ドイツ語が満足に話せるわけではありません。そして、ドイツ語ができたとしても、電話で医者に予約をとるのは(日本にいても)おっくうなものです。

ちなみに、ドイツではどうやら職場で一斉に健康診断をうけさせられる(うけさせてくれる)ということは一般的ではないようです。普段ドイツ生活に適応しようと必死で暮らしているあまり、メディカルチェックをおろそかにされてはいませんか?ここでは、自分から動かないと、調べてもらえません。しくみのうえでは、35歳以上になれば、公的健康保険の範囲で、かかりつけの医者に予約をとるだけで健康診断をしてもらえます('Checkup35'と呼ばれる)。ただ、ごく基本的な検査しか含まれないのと、細かい数値などはほとんど教えてもらえないうえ、ビールとソーセージの国だけあって、肥満かどうかの基準も、非常に緩いものになっていることに注意です。

医者にかかった経験を通し、研究者の視点から興味深いことがいくつかありました。ひとつは、健康保険の会員登録の用紙に、'Dr.' や 'Prof.' などを選ぶ項目があり、自分の健康保険の会員証には 'Dr. (博士)' と印字されることです。ですので、医者の患者カルテにもその情報が記載され、診療を受けると、医者は広い意味での同業者を見つけたうれしさ半分で「何の研究しているの?」と気軽に尋ねてきます。

えっと、日本では・・・・、自分から強く名乗らない限り、学術界を出ると学位など相手にされませんね。ドイツの状況はある意味公私混同ともいえますし、いずれ消えていく文化かもしれません。そして、なんと、銀行のキャッシュカードにも、'Dr.' と印字されます。こんなことで偉そうに振舞うつもりはないですが、学術というものが社会から尊敬されている、というか、守られていることを感じることができる一場面といえます(過去の関連記事もどうぞ)。


「へぇ~」と思ったらクリック↓
にほんブログ村 海外生活ブログ ドイツ情報へ

Tuesday, August 23, 2011

ドイツの医療にお世話になる(1)

昨日、本日と楽に30℃をこえる暑い日が続いています。例年のこの時期は、どうか夏らしさが戻ってほしいと思いながら、結局そのまま短い秋に突入することが多いような気がします。今年は特別のようです。

気候も水も、そして食生活も違うドイツ。こちらに住んでいる方のなかには、体に異変を感じた経験のある方も多いのではないでしょうか?私の場合は、日本でほとんど風邪を引かなかったのに、のどの痛みを中心に、高い頻度で風邪のような症状を体験します。もちろん自分の年齢もどんどん上がっていくので、年のせい、というのもあるかもしれませんが。

今日はこちらの医療制度に関する基礎知識を少し書いてみます。

通院するにあたって、健康保険に加入する必要があるのは当然です。ドイツでは、大きく分けて、公的健康保険(gesetzliche Krankenversicherung) と 民間健康保険(private Krankenversicherung)があります。私は、これまで4年半のあいだに3つの雇用契約を結んで大学で働いてきましたが、1番目と3番目の契約(学術研究員 Wissenschaftlicher Mitarbeiter)のもとでは、前者の公的保険に、また2番目の契約(学術教員 Akademischer Rat)のもとでは後者の民間保険に加入する必要がありました。いろいろ、いろいろ、いろいろややこしい法律などがあり、詳しくは説明しませんが、とくに日本人には飲み込みにくいシステムです。日本は、早くからいわゆる皆保険制度(こちらを参照)を導入し、選ぶ必要がないからです。

上記の2種類の保険システム、大雑把に違いを書いておくと、前者の公的なものは比較的質素で、多くの場合給与から差し引かれるかたちで月額の会費(Beitrag)を払います。扶養家族の加入はタダです。医者にかかったときには、会員証を見せるだけで、保険の範囲内となっている通常の診療に関しては支払いは発生しません。ただ、たしか3か月に一度、診療手数料(Praxisgebühr=10ユーロほど?)を自腹で払う必要があります。

後者の民間保険は、給料から差し引かれるかたちではなく、自分で月当たりの会費を払います。家族についても既往歴などを参考に額が決まります。こちらは、たとえば入院したときに一人部屋を優先的に与えられるとか、メガネ・コンタクトは2年に一度新調できるとか、歯科での予約が取りやすいとか、いろいろイイことがあります。おもに歯科の場合、この民間保険の会員だけを相手にしている医者がいるので、公的保険の会員は、ウェブサイトや看板などをみて、診てもらえるか確認しておく必要があります。こちらの民間保険、実際に医者にかかったときには、毎回実費で全額を支払ったうえで、その後で請求書を雇用者と 保険会社に送ってはじめて、契約に決められた配分(大抵は50%/50%)にしたがって全額が取り戻せる面倒なしくみです。月当たりの会費は、当然、公的なものより高くなるのが普通です。

両方について言えるのは、月額の会費を払っていれば、基本的な診療をうける限り患者負担は発生しない、という点ですね(先日の予防接種なども同様)。こちらでは、住民登録(や滞在許可、つまりビザ取得)の際に健康保険に加入しているかどうかのチェックがありますので、非常に健康で医者いらずの人でも、どこかの健康保険に加入し、会費は払わなければいけません。

以上、私の経験にもとづいて書きましたが、両方の種類の保険とも、会社によって若干の違いはありますし、私の理解は完全でないかもしれません。あくまでも参考としていただいて、詳しい情報が必要な方は、職場のよく知ってそうな方、あるいは保険会社に直接お尋ねください。私の経験上、ドイツ人でも、ここらへんのシステム(とくに民間保険のほう)を知らない人はいくらでもいますので、正しいガイドを見つけることが重要です。私自身が、ここらへんの情報を最初にだれか噛み砕いて説明してくれてたら、いろんな苦労をせずにすんだのに・・・、と思いながら書いてみました。どなたかのお役に立ちますように。

タイトルからわかるとおり、医療関係の続編を予定しています。私の実際の通院に関するエピソードを書くつもりです。


ドイツの医療については、こちらのニュースダイジェストによるページもどうぞ


「へぇ~」と思ったらクリック↓
にほんブログ村 海外生活ブログ ドイツ情報へ