Thursday, July 14, 2011

本当に「ゲノム時代」到来か?

女子サッカー、決勝進出ですね。同じ土俵で胸を張って闘えていることが感じられます。サイエンスでも、同じことが繰り広げられなければいけません。

このブログ、文化の違いなどについての内容が増えています。少し研究の中身に関連したトピックを書きます。

最近のいわゆる次世代(massively parallel)シーケンス技術の発展は、ゲノム(そしてエピゲノム)解析を本当の意味で豊かにしているのか?タイトルはそういう意味です。もちろんその通りなのでしょうが、いろいろ難しい要素もあります。

私自身が関わっているゲノムシーケンスプロジェクト、そして伝え聞いた情報などから、次世代シーケンス技術以前、そして移行期に進められたプロジェクトでもまだまだ解析途中、投稿準備中などのものがいくつかあることを把握しています。

そもそも技術的に難しいゲノムであるとか、生物学的にゲノム解析の切り口が見つけられないとか、単に従事している研究者が忙しいとか、理由はいろいろですが、いわゆる非モデル生物のゲノムシーケンス解析は、結局人の手、あるいは人の目が律速となっていて、いまだ技術革新の恩恵を最大限に享受できていない印象があります。単に配列解析結果を記述するための論文を出版することは可能だとしても、もはやそれではいい雑誌には載らないでしょうし、やる以上はバイオロジーに切り込む(表現型を少しでも説明する)ような解析結果が求められるのが現実です。

GOLD Genome Databaseというページには、あらゆるゲノムプロジェクトがリストされています。米国のNHGRIのページには、さらにパブリックなゲノムプロジェクトを見つけることが出来ます。しかし、どちらのリストも、「計画されているが始まっていない」ものを含んでいます。実際に、ごく最近学術雑誌に出版されたゲノムプロジェクトはいくつあったでしょうか?思いつくもの、多くないと思います。手こずっているものは意外に多いのです。

出版された論文や査読にまわってくる論文、Introductionを読むと、基本的な情報としてそういった凍結されたゲノムプロジェクトを丁寧に紹介しているのを、しばしば見つけることができます。進んでいないプロジェクトだとしたら紛らわしいですね。

中国のBGIも加わり、Genome 10K プロジェクト というのも進められています。果たしてどのくらいのゲノムを、どの精度でアノテーションし、どういう形で生物学者がその結果に触れることが出来るようになるのか、興味深いところです。

技術は進んでも、出てきたデータを見極めて新たな発見をするという「センス」、この重要さは変わらないはずです。それをどう鍛えますか?

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