Wednesday, May 17, 2017

「モデル」とか「非モデル」とか、そういうことではなくて・・・



長らくこちら留守にしてしまっておりました。また色々情報発信していければと思っています。

さて、少し前に、「より手堅い非モデル生物研究のための三種の神器:分子進化学とゲノム情報学の立場から」というタイトルで某所で発表したときに要旨として提出した文章を貼り付けておきます。要旨っぽくないのですが、この話題について、それなりにこだわりを持っていることを文字にしていました。


非モデル生物をとくに分子レベルの研究に使用する際に押さえておくとよい要素を3つ提案する。

1)     扱う生物の系統的な位置(進化の時間軸を含む)
分類学的にだけでなく、分子系統学的にはどう認識されているか?見解が一致していない場合は、どのタイプの分子配列データセットがどのような系統関係を支持しているのか?また、分子情報が豊富な「モデル」近縁種は存在するのか?それはどの程度「近縁」なのか?

2)     ゲノム・トランスクリプトームに基づく遺伝子情報(完成度の情報を含む)
「オミクス」が関係してくるかどうかに関わらず、扱う生物の基本的な特徴はやはり把握しておきたい。ゲノムサイズやUTR長、そしてGC含量などの全体的な傾向を知っていると、解析方法のチョイスなど実務上の判断の助けにもなるかもしれない。加えて、リファレンスとして使用するゲノム・遺伝子情報の完成度を把握しておくことは、発見を意味づけする際の目安となる。世に出ているゲノム情報のなかには完成度が低いものも多々あり、自分のデータがそれに依存しているせいで解析の網羅性が損なわれるとしたら・・・。

3)     「ユニーク」対応してくれるシークエンスパートナー
シークエンサーだけあっても「使える」データは得られない、ということを強調する必要はもうないであろう。サンプル調製からデータ解析に至るまで、ときにゼロからの最適化が必要となる非モデル生物研究の生のニーズに合わせた解決法を提案してくれる相談相手がいれば、低コスト化の面でも心強いはずである。たとえば、一言にRNA-seqといっても、リファレンスゲノム配列がある場合とない場合では、データ解析はもちろん、サンプル調製~シークエンスのやり方を変えたほうがよいかもしれない。

もちろん、これら3つ以外の要素も挙がって然るべきである。その辺を意見交換できれば幸いである。


ごく最近は、「非モデル」生物という言葉を使うことにも抵抗を感じるようになってきました。「モデル」か「非モデル」か、ということは重要ではないのですよ。